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"Gastritis cystica profunda"と多発胃癌

面白い症例を経験しましたので紹介します。

50歳代の男性で、胃内に多発のポリープがありました。組織の検査結果からは中分化腺癌との診断で、胃全摘が行われました。
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組織検索の結果、検索したポリープの全て中分化〜低分化腺癌でした。
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特徴的なのは、その背景粘膜です。高度の萎縮性胃炎で、腸上皮化生も伴っていました。また粘膜下層には、粘膜下異所腺が多発していました。このような像を"Gastritis cystica profunda"とか、"Diffuse cystic malformation"、" Cystica Profunda"と呼ぶ様です。成因としては、先天的に迷入したとする先天性迷入説と、後天的に繰り返す粘膜のびらん、再生の結果、上皮成分が粘膜下層に迷入したとする後天性炎症説がありますが、最近では後者の方が有力です。
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粘膜下異所性腺と胃癌との関わりは古くから知られており(岩永ら、最新医学 1986; 41: 2418-)、多発性胃癌が発症する母地になる様です。一般的には異所腺と癌の連続性は認めず、前癌病変ではなく、paracancerous lesion であると考えられています。(しかし、異所腺自体の癌化の報告例も存在しますが。。。)

組織を見ていて気付いたのですが、癌にしては随分とリンパ球浸潤が目立ちます。このような胃癌では、EB virus関連胃癌が知られていますが、そこで見られる様なリンパ濾胞の発達等は目立ちませんでした。しかし、向所先生から最近、粘膜下異所性腺を伴う多発胃癌にEB virusが検出されるという論文(Choi MG, et al. Cancer. 2012 Nov 1;118(21):5227-)がある事を教えて頂きました。

そこで、この症例もEBERのISHを行って頂いたところ。。。
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見事な陽性所見を得る事が出来ました。EBERは癌部で陽性で、非癌部では陰性です。
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また浸潤するリンパ球にも陽性所見を認めました。
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発癌と慢性炎症の関連は古くから言われていますが、非常に興味深い症例でした。
by hqpatho2 | 2013-06-19 18:13 | 日常

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